【卓球】 2018年8月世界ランキング、張本智和が6位に躍進

国際卓球連盟(ITTF)のホームページで2018年8月の世界ランキングが発表されました。


今回の世界ランキングでは、先日のオーストラリアオープンで準決勝まで行った張本智和が6位に上がり自己の最上位ランキングを更新しています。平野美宇はオーストラリアオープンで準々決勝まで行きましたが、先月に続き1つ順位を落として9位になりました。また、オーストラリアオープンで優勝した劉詩雯と許昕が2位に上がりました。また、17位まで下がっていた丁寧もオーストラリアオープンの準優勝と韓国オープンの結果でトップ10に顔を出しました。


8月のランキングポイントは原則2017年8月から2018年7月に行われた大会が対象になります。8月に行われた大会では以下の大会がシニアのポイントの対象となります。


  • 韓国オープン(ワールドツアープラチナ)
  • オーストラリアオープン(ワールドツアープラチナ)
  • アラブ卓球選手権(大陸選手権)
ワールドツアープラチナは、年に複数回行われるツアーの大会では最も格の高い大会で、ポイントもオリンピック、世界選手権、ワールドカップ、およびグランドファイナルに次いで高い大会になります(ポイントの説明についてはこちら)。ワールドツアープラチナは、準決勝敗退でワールドツアー優勝と同じ1800ポイントなので大きいです。アラブ卓球選手権はITTFの年間カレンダーに載っているので大陸選手権と思われますが、不明です。

ではまず今月のランキングを見てみましょう。
 *カッコ内は前月順位  女子  ポイント  男子 ポイント 
 1 朱雨玲(中国)(1)  16524(+450) 樊振東(中国)(1) 17001(±0) 
 2 劉詩雯(中国)(6) 15669(+1890)  許昕(中国)(5) 15385(+1650)
 3 陳夢(中国)(3) 15294(-225)  ボル(ドイツ)(2)  15205(±0)
 4 石川佳純(日本)(4)  15135(+230) 林高遠(中国)(3)  15189(+225)
5  王曼昱(中国)(2) 15105(-564)  オフチャロフ(ドイツ)(4)  14915(+450)
 6 伊藤美誠(日本)(5)  14180(±0) 張本智和(日本)(6)  13584(+550)
 7 丁寧(中国)(17)  13884(+3375) 馬龍(中国)(6)  13500(±0)
 8 鄭怡静(台湾)(9)  13231(+375) 李尚洙(韓国)(7)  13374(+225)
 9 平野美宇(日本)(8)  13193(+315) カルデラノ(ブラジル)(10)  13355(-516)
 10 陳幸同(中国)(7)  12708(±0) 黃鎮廷(香港)(9)
 12969(±0)
 11 馮天薇(シンガポール)(12)  12565(+750)  丹羽孝希 (12)
 12466(±0)
 12 徐孝元(韓国)(13)  11954(+630)  水谷隼 (13)
 11970(+225)

(注)ポイントのカッコ内は前月からの増減です。

 今回の世界ランキングでは、7月にワールドツアープラチナが2大会あったため全体的にランキングポイントが増えています。アジアとオセアニアの大会だったのでヨーロッパ勢の出場が少なく、相対的にアジア選手が上がっています。ただ、中国勢は若手がアジア競技大会の準備のため、男子では樊振東や林高遠、女子では陳夢、朱雨玲、王曼昱など若手が両方の大会またはオーストラリアオープンに出場していないため、中国勢ではあまりポイントの増えていない選手もいます。

今月の世界ランキングでは昨年7月にあった大会のポイントがなくなりますが、昨年7月にあったポイントの大きな大会はオーストラリアオープンだけです。昨年のオーストラリアオープンは日本勢が中国勢に1回戦でほぼ全滅させられた大会で、日本選手は獲得ポイントも少なかったので現在ランキングポイントに算入されている選手は少なく影響はありません。一方、昨年のこの大会で準優勝だった王曼昱は、先月は韓国オープンは準々決勝で敗退、オーストラリアオープンは欠場なので、ポイントを大きく減らしています。


 女子は、今回は丁寧と劉詩雯の大幅なランクアップが特筆されます。来るべき人達が来たという感じですね。大幅にランクアップした要因は、ランキングポイントの大幅な増加です。通常は、ランキングポイントに算入されている8大会のポイントの中の最低ポイントが新しい獲得ポイントより低い場合に、そのポイントと置き換えられるので、増加はだいたい200ポイント台か300ポイント台、せいぜい500ポイント台です(ランキングポイントの仕組みはこちらを参照)。しかし、今回劉詩雯は1890ポイント、丁寧に至っては3375ポイントを増やしています。このようにランキングポイントの大幅な増加が起こる原因は、現在算入されている大会が8大会に満たないため獲得ポイントがそのまま加算される場合、および現在算入されている大会のポイントが低い場合です(6月の世界ランキングの中国選手の説明を参照)。ここで、二人の 7月の世界ランキング時点での ランキングポイントへの算入大会数、算入最低ポイントと次に低いポイント(最低ポイント2)、および7月の2大会での獲得ポイントをまとめてみます。

 算入大会数 最低ポイント   最低ポイント2  韓国OP 豪州OP 
 丁寧  6  900  1464  1350(2回戦)  2025(準優勝)
劉詩雯  8  900  1260  1800(準決勝)  2250(優勝)

表から、丁寧はこの2大会の獲得ポイントがそのまま加算されていること、劉詩雯はポイントは2個とも入れ替わったものの、前のポイントが低くこの2大会の獲得ポイントが非常に高かったため大幅に増加したことがわかります。さらに、丁寧の900ポイントはまだ8月のランキングポイントにも含まれているのでまだ大幅なポイント増加の可能性を残しているということです。

 

 男子は、許昕と張本智和が順位を上げた以外、顔ぶれに変化はありませんでしたが、先月トップ10から漏れた丹羽孝希が11位と再度トップ10入りを狙う位置につけ、そのすぐ後に水谷隼がつけています。

 そのほかの主な日本選手の順位は、女子は佐藤瞳が14位(14位)、早田ひなが16位(15位)、加藤美優18位(18位)、芝田沙季19位(20位)、橋本帆乃香27位(24位)、浜本由惟31位(27位)、長崎美柚38位(38位)となっています。

男子は、松平健太が19位(15位)、吉村真晴27位(26位)、 上田仁が28位(26位)になっています。また、オーストラリアオープンで大活躍だった 大島祐哉も50位から32位まで戻しています。

日本女子トップ選手のランキングポイントの内訳

 先月はワールドツアープラチナ大会が2大会があり、8月にはワールドツアー2大会があり、それが終わるとワールドツアープラチナとワールドツアーが1大会ずつといよいよ年内の大会も少なくなります。


そこで、今回は日本の女子トップ3人の現在のランキングポイントの内訳と今後の出場予定の試合に注目してみたいと思います。


まず、現在のランキングポイントの内訳を一覧にしてみます。

出場した大会をすべてリストにしていますが、太字が8月のランキングポイントに算入されているポイントです。

 平野美宇 石川佳純  伊藤美誠 
2017 世界選手権(2017/05)  2400(SF) 2100(QF) 1800(R16)
 ブルガリアOP(2017/08)  -- 1800(優勝) 1620(準優勝)
 チェコOP(2017/08)  --  1620(準優勝) 1800(優勝)
 アジアカップ(2017/09) 1350(4位)  1440(3位) --
オーストリアOP(2017/09) @  563(R32*)  563(R32*)
 ポーランドOP(2017/10)  --  --  900(優勝)
 ワールドカップ(2017/10)  1913(4位)  1530(R16)  --
 ドイツOP(2017/11)@  563(R32*) 1800(SF)  1575(QF)
 スウェーデンOP(2017/11)  450(R32*)  1440(SF)  450(R32*)
 グランドファイナル(2017/12) 1530(R16)  1785(QF)  1785(QF)
 チームワールドカップ(2018/02)  0(0勝)  1500(5勝)  300(1勝)
 カタールOP(2018/03)@  1575(QF)  1800(SF)  563(R32*)
 ドイツOP(2018/03)@ 1350(R16) 2250(優勝)  1350(QF)
 アジアカップ(2018/04)  1298(5位)  1554(3位)  --
2018 世界選手権(2018/04)  1500(6勝)  1750(7勝)  2000(8勝)
 香港OP(2018/05)  1080(R16)  450(R32*)  1440(SF)
 中国OP(2018/05)@  563(R32*)  1575(QF) 1800(SF)
 ジャパンOP(2018/06)  1260(QF)  1260(QF)  1800(優勝)
 韓国OP(2018/07)@  563(R32*)  1800(SF)  1575(QF)
 オーストラリアOP(2018/07)@  1575(QF) 1800(SF)  1575(QF)

(注)@はワールドツアープラチナ大会。OP=オープン、カッコ内は最終結果(R32=ラウンド32(通常は1回戦)、R16=ベスト16(通常は2回戦)、QF=準々決勝、SF=準決勝。R32*=ワールドツアープラチナとワールドツアーでは、シード選手が1回戦敗退の場合獲得ポイントは半分になります。

この表を見ると、今の世界ランキングでの位置が象徴するように今年に入ってからの石川佳純と伊藤美誠の好調さがわかりますが、さらに以下のことが明らかになります。


  1. 石川佳純はワールドツアーよりワールドツアープラチナで成績が良い
  2. 伊藤美誠は2018世界選手権以降急激に調子を上げている
  3. 1785ポイント以上の大会は石川佳純が8大会(算入されている大会すべて)、伊藤美誠が6大会に対して平野美宇は2大会(上位2名に入るには算入される8大会のポイントのほとんどが1800ポイント以上である必要がある)
  4. チームワールドカップではシングルスで使ってもらわないとポイント上不利になる(伊藤は意外とシングルスでは1勝で300ポイントしかない)
東京オリンピックのシングルス出場2選手は2000年1月の世界ランキングでの日本選手の上位2名となります。2000年1月のランキングポイントに算入されるのは来年(2019年)の大会での獲得ポイントと今年の世界選手権のポイント(上記の表の赤字のポイント)です。そのため、年内の試合のポイントはオリンピック選考に関わるわけではないですが、来年になったら急に調子が良くなるわけでもないので、きちんと調子を上げて行くこと、また石川や伊藤のようにポイント獲得という点にターゲットを定めて、大会への臨み方にメリハリをつけることも重要になってくると思います。

では、年内で3人が出場する試合をまとめます。
伊藤美誠はワールドカップには出場しません。
 大会名  本戦期間 出場選手
 優勝P
 1回戦敗退P
 ブルガリアOP  8/16~8/19 平野、石川、伊藤  1800  900
 チェコOP  8/23~8/26  平野、石川、伊藤
 1800  900
 女子ワールドカップ  9/28~9/30  平野、石川  2550  1530*
 スウェーデンOP  11/1~11/4  平野、石川、伊藤
 1800  900
 オーストリアOP@  11/8~11/11 平野、石川、伊藤
 2250  1125
 グランドファイナル  12/13~12/16  (不明:石川、伊藤は確実)  2550  1530*

(メモ)優勝P = 優勝時の獲得ポイント、1回戦敗退P = 1回戦敗退時の獲得ポイント、WTプラチナ = ワールドツアープラチナ、ワールドツアープラチナおよびワールドツアーの1回戦はベスト32(R32)からと想定しています。また、ワールドツアープラチナとワールドツアーでは、シード選手が1回戦敗退の場合、獲得ポイントは半分になります。

*ワールドカップとグランドファイナルは本戦はベスト16からです。

 また、上記のランキングポイントの内訳の表でも分かるように来年の世界選手権(個人戦)に出場して結果を出すことはポイント上でも非常に重要です。平野美宇は、ワールドカップ、オーストリアオープン、グランドファイナルで最低2回優勝、石川佳純は最低1回優勝すれば来年の世界選手権の出場が確定します。伊藤美誠はオーストリアオープンかグランドファイナルで優勝すればやはり来年の世界選手権の出場が確定します。それ以外で自力で出場権を得るには、以下の条件のいずれかが必要です。

  1. 選考会の優勝
  2. 2019年1月の世界ランキング20位以内で日本人最上位
  3. 2019年1月の世界ランキング100位以内で日本人最上位(2の条件の選手以外)
  4. 2019年全日本選手権のシングルス優勝者
これらの条件を満たさない場合、日本卓球協会の選考にまかせることになるため、なんとか自力で出場資格を獲得したいところです。また、3の条件は実質2019年1月の世界ランキングで日本人2位と取れるので、この意味でも年内の残された試合は重要です。

 平野美宇は昨年は、石川佳純と伊藤美誠が優勝と準優勝を分け合った8月のブルガリアオープンとチェコオープンに出場していないので、上記のランキングポイント内訳の表からもわかるように今年後半はランキングポイントに影響する失効ポイントが少ないので、8月の大会で好成績を納め、9月の以降の大会では昨年以上の結果を出してほしいです。