【卓球】 「中国卓球リーグの日本排斥」報道は誤報

 10月5日朝に、突然日刊スポーツのウェブニュースで「卓球・中国Sリーグが日本選手排除、平野ら参戦消滅」という短い記事が出て、その後「美宇、佳純アウト、中国卓球が日本選手排除するt理由」という記事が出た。そして、この記事を元にしたと思われる報道がその日のうちに、読売、時事、ヤフーニュース、NHKのニュースになって広まった。自分は早速このニュースのソースを調べるべく中国のネットを検索してみたが、それらしいニュースは見当たらなかった。

 翌日の 卓球専門誌「卓球王国」のウェブページに出た記事 では、前日のニュースをもとに日本卓球協会の宮崎義仁強化本部長に取材し、「そのような事実はない」ことを確認したようだ。唯一、NHKテレビのニュースで言っていた「平野美宇の契約先が契約金の資金不足を理由に断って来た」ということだけが事実のようだ。

 もともと、平野美宇のアジア選手権での活躍以来中国のサイトでは個人のサイトも含め日本選手を受け入れて鍛えてやる必要はないという意見が飛び交っている。卓球王国の記事にも日刊スポーツの記事に対して「本当にそれは真実なんだろうか。それとも過剰に反応した誤報だろうか。新聞記者は事実の裏を取ったのだろうか、という疑問が残る」と書かれている。自分もそう思う。第一、日刊スポーツの記事には中国スーパーリーグの参加の成果がすぐに表れて昨年10月のワールドカップで優勝したと書かれているが、これは間違いである。実際には、契約したのはワールドカップ前だったが参加はワールドカップの後だった。ワールドツアー優勝の勲章を持って参加できたのでほとんどの試合でトップ選手と戦わせてもらえることになったのだ。このような事実も把握していないレベルの記者が、平野美宇が断られた事実だけから膨らませて書いた記事だと思われてもしかたない。


 これも、「卓球王国」のウェブサイトの記事からの情報だがわかっていることは次の点だけだ。

  1. 平野美宇が交渉を進めていた中国の黒龍江省のチームが資金不足を理由に断ってきた
  2. 中国卓球協会の事務局は「日本排斥」は寝耳に水
  3. 中国卓球協会は外国選手参加禁止の通達は出していない
  4. スーパーリーグの日程自体がまだ決まっていない
  5. 通常は、選手とクラブの契約は中国卓球協会も口を出さない
  6. スーパーリーグの2、3の監督から外国人は取らないという話は出ている
  7. 日本卓球協会も中国から外国選手参加禁止の連絡は受けていない

さらに、次の日に「卓球王国」のウェブサイトに出た記事では「日本選手排斥はあり得ない」と結論付けている。

その理由は上記の事実に加え、さらに中国卓球界では劉国梁総監督の辞任、男子トップ3選手の中国オープンでのボイコットと異常事態が発生した上に、8月から9月にかけて開催された4年に一度の全中国運動会もあり、中国卓球協会は非常に忙しくスーパーリーグの日程さえ決まっていないほどで、海外選手締め出しなどが協会から発せられることはあり得ないし、これまでの日中の卓球協会の友好関係から考えてもあり得ないと結論付けている。

 また「日本排斥」などの多くの記事に書かれている「平野美宇の排除が真の目的」ということ自体も、平野美宇はアジア選手権の後は中国の若手選手に負けており、国内メディアはあまりに過大評価し、過敏になり過ぎているということを付け加えている。確かに、平野美宇は中国の顧玉婷にカタール、オーストラリア、オーストリアと今年のワールドツアープラチナ3大会で1回戦で当たり3連敗中だ。また、丁寧に2回リベンジされた以外に陳夢に1回、朱雨玲にも2回リベンジされ、本気になった中国の強さを見せつけられている。


「卓球王国」は長い歴史を持つ卓球専門誌で日本選手が出てない全中国運動会でも現地取材を行うぐらい中国卓球界に密着しているので、今のところ最も信頼できるのではないか。


もちろん、中国で日本選手の急成長が警戒されているのは事実であり、実際に日本選手が受け入れないことになる可能性はもちろんある。

それに、今回の日本のニュースが日本で広まり、そのことが中国で話題になっているらしい。


 結局「スポーツ紙が扇情的に、大げさに報道したことを、さらに中国側の裏を取らずに通信社や一般紙が追従したことも残念だ。「卓球王国」のウェブサイトの記事の中でも「誰が主語なのかがはっきりしていない」とし、今回のように何も正式なコメントを発していない中国卓球協会が悪者扱いされた(実際、ヤフーニュースでのコメントには中国は狭量だと非難するものが多かった)ケースは協会関係者としては納得いかないだろうし、間違った情報がネットやテレビを駆け巡り一般の人にまでインプットされてしまう怖さを感じたとしている。


 実際、自分も同じことを感じる。今回のニュースは日本を発端として中国のネットに広まっている。中国卓球リーグの外国人受け入れについては一般大衆だけでなく中国卓球協会内部でも、外国人選手を入れて卓球リーグの人気をもっと上げるべきという意見と、外国の選手強化に手を貸す必要はないという意見が中国卓球協会の中にもあるようだ。中国卓球協会のお偉いさんの耳に入って気を悪くされこのような外国選手受け入れ推進派の人達の勢いをそいだり、友好だった日本卓球協会との間に亀裂が生じたりして、日本選手排除が現実になってしまうということにでもなれば、まさに本末転倒である。

ちなみに ここで付け加えると、卓球の話題に敏感なテレビ東京のスポーツウォッチャーがこの話題に触れなかったのはさすがだった。たぶん、裏が取れなかったのだろう。

おもろかったら「ええやん」してや。Tweetでもええで。