【卓球】 2018年11月世界ランキング

 国際卓球連盟(ITTF)のホームページで2018年11月の世界ランキングが発表されました。ランキング順とランキングポイントを説明します。


今回の世界ランキングでは、先月の世界ランキングで説明したように石川佳が自己最高タイの3位に浮上しました。これは、中国の劉詩雯がランキングポイントを減らしたことによるものですが、同様に朱雨玲や鄭怡静、平野美宇もランキングポイントを減らしています。また、平野美宇と張本智和などユースオリンピックに出場した選手は忙しかったですが、ユースオリンピックはシニアのポイントではなくジュニアランキングのポイントとして算入されるのでシニアの世界ランキングには影響しません。


11月のランキングポイントは原則2017年11月から2018年10月に行われた大会が対象になります。10月に行われた大会では以下の大会がシニアのポイントの対象となります。


  • 男子ワールドカップ
  • ベルギーオープン(チャレンジシリーズ)
ワールドカップは 、オリンピックと世界選手権と並び卓球の三大タイトルと言われています が、 優勝ポイント的にはグランドファイナルと同じで 、オリンピックや世界選手権より低 く、 ワールドツアープラチナより高 優勝ポイント となっています。
また、11月の世界ランキングでポイントが無効になった昨年10開催の大会は女子ワールドカップと男子ワールドカップ、そして伊藤美誠が優勝したチャレンジシリーズのポーランドオープンだけです。

ではまず今月のランキングを見てみましょう。
 *カッコ内は前月順位  女子  ポイント  男子 ポイント 
 1 朱雨玲(中国)(1)  17469(-1200) 樊振東(中国)(1) 17751(+750) 
 2 丁寧(中国)(2) 15984(±0)  許昕(中国)(2) 15610(±0)
 3 石川佳純(日本)(4) 15263(±0) ティモ・ボル(ドイツ)(3)  15025(-164)
 4 陳夢(中国)(5)  15014(±0) 林高遠(中国)(5)  14551(+255)
5  王曼昱(中国)(6) 14430(±0)  オフチャロフ(ドイツ)(4)  13738(-637)
 6 劉詩雯(中国)(3)  13914(-1395) 張本智和(日本)(8)  13725(+411)
 7 伊藤美誠(日本)(8)  13910(±0) 李尚洙(韓国)(7)  13629(+255)
 8 鄭怡静(台湾)(7)  13231(-780) 黃鎮廷(香港)(9)  13215(+246)
 9 平野美宇(日本)(9)  13013(-615) ウーゴ・カルデラノ(ブラジル)(11)  12515(+486)
 10 陳幸同(中国)(10)  12594(±0)  丹羽孝希(日本)(10)
 12151(±0)
 11 馮天薇(シンガポール)(11)  12565(±0) 馬龍(中国) (6)
 11910(-2040)
 12 徐孝元(韓国)(12)  12209(-260)  マティアス・ファルク (19)
 11353(+1080)

(注)ポイントのカッコ内は前月からの増減です。

 まず注目するは石川佳純が3位に返り咲いたことです。石川佳純のランキングポイントに変化はありませんでしたが、3位にいた劉詩雯が昨年のワールドカップのポイントが無効になったことでポイントを減らしました。石川佳純は昨年は1回戦敗退で獲得ポイントが小さくランキングポイントに算入されていなかったのでランキングポイントに影響がありませんでした。


 すでに書いたように10月はチャレンジシリーズのベルギーオープンだけでポイントの大きいワールドツアーがなかったので、今年または昨年のワールドカップに出場した選手以外はトップ選手のポイントの変動はありませんでした。特に女子は昨年と今年でワールドカップの開催月が異なったため先月は昨年と今年の2大会分のポイントが算入され、両方の大会に出場した選手のポイントは多めになっていました。今月のランキングで昨年の女子ワールドカップのポイントが無効になりそのため平野美宇や劉詩雯、朱雨玲、鄭怡静はポイントを大きく減らしています。男子ワールドカップは昨年と今年で同じ10月の開催だったので昨年と今年の獲得ポイントが入れ替わりました。そのため、昨年出場せず今年優勝した樊振東や昨年より結果の良かった林高遠はポイントを増やしましたが、昨年は優勝と準優勝のオフチャロフとボルはポイントをへらしました。また、馬龍は昨年は3位でしたが今年は出場していないので昨年の獲得ポイント(2040ポイント)が無効になったうえ替わりにランキングポイントに算入されるポイントがなかったため2040ポイントのマイナスになってしまいました。水谷隼も昨年のワールドカップに出場し今年は出場しなかったため1222ポイントを減らし19位まで順位を下げています。


 また、ずっと14位を維持していた佐藤瞳が13位に浮上してトップ10に一歩近づきました。男子では、ウーゴ・カルデラノが新たにトップ10に入ったほかにスウェーデンのマティアス・ファルク(マティアス・カールソン)が19位から一気に12位まで順位を上げてきました。ファルクは11月のスウェーデンオープンでも準決勝まで進んだので12月の世界ランキングではさらに順位を上げてくると思われます。


 そのほかの主な日本選手の順位は、女子は芝田沙紀17位(20位)、加藤美優20位(25位)、橋本帆乃香29位(30位)、 早田ひな30位(31位)、 長﨑美柚37位(39位)、安藤みなみ41位(43位)となっています。

男子は、吉村真晴28位(27位)、大島祐哉29位(28位)、 松平健太が30位(29位) 、上田仁36位(37位) 、森薗政崇39位(40位) になっています

トピック:丹羽孝希がグランドファイナルに出場する条件

今月のトピックでは、9月の世界ランキングの記事に続いて12月に開催されるグランドファイナルを扱いたいと思ます。というのも、この記事の執筆時点ではすでにスウェーデンオープンが終わって結果が出ていて、丹羽孝希が出場できるかどうかのボーダーライン上にいるためです。


12月に行われるワールドツアーグランドファイナルは年間12大会あるワールドツアー(プラチナ)の締めの大会で、男女それぞれのこの12大会での成績上位16名がトーナメントで戦って年間チャンピオンを決めます。賞金も大きく、獲得できるポイントもワールドカップと同じです。たとえ初戦の1回戦で敗退してもワールドツアープラチナの準々決勝敗退と近いポイントを獲得できます。そのため、世界ランキングを上げるにはこの大会に出場できるかどうかが重要です。


グランドファイナルに出場できる16名は世界ランキングを決めるポイントではなくワールドツアー独自のポイント(「ワールドツアーポイント」と仮に呼びます)の累計で決まります(詳細な説明は9月の世界ランキングの記事のトピックをご覧ください)。


ここでは、9月の世界ランキングのトピックで上げた現在の累積ワールドツアーポイントと順位のスウェーデンオープン後のものを示し、あと1大会(オーストリアオープン)で丹羽孝希のグランドファイナル出場が決まる条件を検討してみます。


まず、スウェーデンオープン後の累積ワールドツアーポイントの順位表です。

 女子選手名 累積ポイント  男子選手名  累積ポイント 
1  王曼昱(中国)
 1556(7)  許昕(中国)  1450(7)
 2  石川佳純(日本)  1551(10) 樊振東(中国)  1300(4
 3 劉詩雯(中国) 1325(6)  馬龍(中国)  1039(5)
 4 伊藤美誠 (日本)  1077(10)  張本智和(日本)  809(9)
 5 丁寧(中国)  1013(6)  林高遠(中国)  616(4
6   朱雨玲(中国)  700(4 張禹珍(韓国)  605(8)
 7  陳夢(中国)  594(4  ウーゴ・カルデラノ (ブラジル)  538(6)
8   徐孝元(韓国)  563(8 林鐘勲 (韓国)  462(8)
 9  佐藤瞳(日本)  461(10)  フランツィスカ(ドイツ)  461(9)
 10 陳幸同(中国)  442(8)  梁靖崑(中国)  447(4
 11 鄭怡静(台湾)  439(7) 水谷隼(日本)  441(6)
 12  芝田沙季(日本)  437(9)  李尚洙(韓国)  419(7
 13 平野美宇 (日本)  417(10) 黃鎮廷(香港)
 407(7)
 14 孫穎莎(中国)  416(7) 劉丁碩(中国)  371(5
 15 馮天薇 (シンガポール)  415(8)  大島祐哉(日本)  349(8)
 16  田志希(韓国)  308(8) 丹羽孝希(日本)
 288(9
17  何卓佳(中国)  279(4 鄭培鋒(中国)  281(3
 18 王芸迪(中国)  257(5)  荘智淵(台湾)  279(10)
 19 梁夏銀(韓国)  250(8  吉村和弘(日本)  266(7)
20
 加藤美優(日本)  238(9)  フレイタス(ポルトガル) 264(6
 21  早田ひな(日本)  198(9)  ティモ・ボル (ドイツ)  263(4)
 22  陳思羽(台湾)  195(8)  ファルク(スウェーデン)  261(8)

表の 累積ポイントの後ろのかっこ内は今年の出場大会数です。赤字の場合は、最低出場大会数(5大会)を満たしていないことを示します。また、赤字の選手名は残るオーストリアオープンに出場しても最低出場大会数の条件を満たさない、つまりグランドファイナルには出場できない選手を示します。21位以降も確認する場合はこちらのITTFのページをご覧ください。

ワールドツアーの残る試合はオーストリアオープンのみなので、オーストリアオープンの結果が出ると順位が確定しまので、まず、オーストリアオープンで獲得できるシングルスのワールドツアーポイントを確認しておきます。

 最終結果 優勝   準優勝  準決勝敗退 準々決勝   2回戦敗退  1回戦敗退
 ポイント  500  300  200  100  50  25

女子は、出場試合数があと1試合必要な陳夢と朱雨玲がオーストリアオープンに出場するので16位までの選手はすべて出場権があります。また、15位の馮天薇と田志希の間が100ポイント以上離れているので15位以上はほぼ確定と思われます。さらに20位の加藤美優と21位の早田ひなとは40ポイント差があるので実質16位から20位までの選手で16位の座を争うことになります。5選手ともオーストリアオープンは予選からの出場なので、20位の加藤美優も1人だけ本戦に進み準々決勝まで行けば16位もあります。

男子は女子以上に混戦です。14位から22位までは累積ポイントが100ポイント以内です。特に16位の丹羽孝希から22位のマティアス・ファルクまではわずかに27ポイント差です。オーストリアオープンはワールドツアープラチナでワールドツアーポイントも大きいので27ポイントの差は簡単に逆転されてしまいます。

17位の鄭培鋒は条件を満たせないので除外して、残りの6選手のうち有利なのはオーストリアオープンで決勝トーナメントから出場でき確実に25ポイント以上を獲得できる丹羽孝希、荘智淵、フレイタス・マルコス、ティモ・ボルの4選手です。もちろん、スウェーデンオープンで予選から開始して準決勝まで進んだマティアス・ファルクも十分に決勝トーナメントに進出する可能性がありますし、吉村和弘にも頑張ってほしいです。

なお、馬龍はスウェーデンオープンの1回戦を棄権しましたが1大会の出場としてカウントされグランドファイナルの出場を確定させています。


では、最後にこの4選手のオーストリアオープンの結果による最終の累計ワールドツアーポイントをまとめておきます。

[11/8追記]オーストリアオープンで吉村和弘が予選を突破し決勝トーナメントに進出したため吉村和弘を追加しました。

大会の 結果  丹羽孝希 (288)
荘智淵  (279) 吉村和弘 (266)
 フレイタス (264) ボル (263) 
 1回戦敗退  313  304  291  289 288 
 2回戦敗退  338  329  316  314  313
 準々決勝敗退  388  379  366  364  363
 準決勝敗退  488  479  466  464 463 
 準優勝  588  579  566  564  563
 優勝  788  779  766  764  763

ポイントで先行している丹羽がわずかに有利ですが、最終結果が1回戦と2回戦というように1ラウンドの違いで逆転するのであってないような差です。

また、6選手中2選手が準々決勝に進めば15位の大島まで届くので、予選を突破しなければポイント加算のない島にとっても脅威です。