【卓球】 2019年9月世界ランキング

 国際卓球連盟(ITTF)のホームページで2019年9月の世界ランキングが発表されました。ランキング順とランキングポイントをまとめます。


2019年9月のランキングポイントは原則2018年9月から2019年8月に行われた大会が対象になります。つまり、2019年8月に獲得したポイントが8月のランキングポイントに加えて新たにランキングポイントの対象になり、2018年8月に獲得したポイントは対象でなくなります。


2019年8月に行われた大会では以下の大会がシニアのポイントの対象になります。


  • 2019ブルガリアオープン(ワールドツアー)
  • 2019チェコオープン(ワールドツアー)
  • ナイジェリアオープン(チャレンジプラス)
  • アフリカカップ(大陸カップ戦)
  • パンナム競技大会(マルチスポーツイベント)
  • 全アフリカ競技大会(マルチスポーツイベント)
  • フランダース国際卓球トーナメント(その他の大会)
また、9月の世界ランキングでポイントが無効になった大会は以下の4大会です。
  • 2018ブルガリアオープン(ワールドツアー)
  • 2018チェコオープン(ワールドツアー)
  • 2018ナイジェリアオープン(チャレンジシリーズ)
  • アジア競技大会(マルチスポーツイベント)
ではまず今月のランキングを見てみましょう。
 *カッコ内は前月順位  女子  ポイント  男子 ポイント 
 1 陳夢(中国)(1)  16605(±0) 許昕(中国)(1) 15980(-335) 
 2 丁寧(中国)(2) 15020(-360)  樊振東(中国)(2) 15200(-270)
 3 朱雨玲(中国)(3) 14710(±0) 馬龍(中国)(3) 14955(±0)
 4 王曼昱(中国)(4) 14210(-230) 林高遠(中国)(4)  14660(-240)
5  劉詩雯(中国)(5) 13890(±0) 張本智和(日本)(5) 13465(+120)
 6 孫穎莎(中国)(7) 12915 (±0) カルデラノ(ブラジル)(6) 12790 (+250)
 7 伊藤美誠(日本)(8) 12620 (-90) ティモ・ボル(ドイツ)(8) 12445(+120)
 8 石川佳純(日本)(6) 12443 (-690) 梁靖崑(中国)(9)  12190(±0)
 9 平野美宇(日本)(10) 12140(+90) ファルク(スウェーデン)(7) 12140(-200)
 10 鄭怡静(台湾)(9) 12125(-65) 林昀儒(台湾)(13)
11055(+810)
 11 杜凱栞(香港)(11) 10680(-330) 丹羽孝希(日本) (10)
10840(-360)
 12 馮天薇(シンガポール)(12)  10515(-10) オフチャロフ(ドイツ)(11)
10763 (±0)
 13 陳幸同(中国)(21) 10485 (+2160) 水谷隼(日本)(14) 10195 (±0)

 女子は上位5選手の順位に変動はありませんでしたが、先月6位だった石川佳純から10位だった平野美宇の間で顔ぶれは変わりませんでしたが微妙な順位の変動がありました。これは石川が昨年8月のチェコオープンで優勝したときのポイントが無効になったことにより他の選手よりもランキングポイントの変動幅が大きかったことが要因です(有効ポイントの表を参照)。また、平野美宇も昨年8月のブルガリアオープンとチェコオープンのポイントをランキングポイントに算入していたため影響がありましたが今回のチェコオープンで準優勝だったため逆にランキングポイントが増え、昨年8月のアジア競技大会のポイントが失効した鄭怡静(チェン・イーチン)のポイントをわずかに上回りました。

今回のブルガリアオープンとチェコオープンのどちらにも優勝した中国の陳幸同(チェン・シントン)は、ランキングポイントを大きく伸ばして13位まで上げてきました。また、同じ中国の何卓佳(フー・ジュオジア)も先月19位から15位に上がって来ています。

 男子も9位までは女子のように変動が少なく7位~9位の間で入れ替えが起こっただけでしたが、先月16位から13位に上げていた台湾の18歳の林昀儒(リン・ユンジュ)が今回のチェコオープン優勝でとうとう10位に入って来ました。
なお、孫穎莎のトップ10入りは初めてではなく、シニアデビュー戦のジャパン


 そのほかの主な日本選手の順位は、女子は、佐藤瞳19位(17位)、加藤美優25位(26位)、芝田沙季27位(20位)、早田ひな29位(34位)、橋本帆乃香36位(32位)、長﨑美柚49位(44位)、木原美悠51位(52位)となっています。

男子は、吉村和弘34位(43位)、吉村真晴60位(48位)、森薗政崇62位(56位)、上田仁69位(50位)となっています。

松平健太は昨年準優勝だったチェコオープンのポイントの失効が響いて先月の59位から123位と一気い100位圏外まで大幅に順位を下げています。また、大島祐哉も昨年のブルガリアオープンのポイント失効が響き先月の49位から80位まで順位を下げています。この結果、50位以内の選手が先月の7名から4名に減ってしまっています。 男子は、中堅層にもっと頑張ってほしいですね。

今月のトピック :代表レースの今後の展開

 東京オリンピック代表レースの後半戦も最初の1か月が終わりワールドツアー2大会の結果がさらに出ました。そして、残された期間も4か月、大会数もワールドツアー以上の大会だけで見ると次の7大会となりました。


  • アジア選手権
  • スウェーデンオープン(ワールドツアー)
  • ドイツオープン(ワールドツアープラチナ)
  • オーストリアオープン(ワールドツアープラチナ)
  • ワールドカップ
  • チームワールドカップ
  • グランドファイナル
そこで今月は「東京オリンピック代表への道」のページでやっている2020年1月世界ランキング対象ポイントの積算ではなく、現在の獲得ポイントと残り4か月で出場する大会を踏まえたより具体的なシミュレーションをしてみたいと思います。

まず女子からです。
ここでは最終的に1000ポイント未満のポイントはランキングポイントに算入する8大会のポイントには入ってこないという前提で考えて、トップ3選手の現在の獲得ポイントを表にまとめてみます。
伊藤美誠
平野美宇   石川佳純
 ①  2000  1500  1750
 ②  1465  1500  1465
 ③  1465  1465  1200
 ④  1440  1440  1170
 ⑤  1170  1170  1170
 ⑥  1125
 ⑦
 ⑧
 T2ダイヤモンド(マレーシア)  400  400  400
 T2ダイヤモンド(シンガポール)
 合計  9065  7475  7155

現状では1000以上のポイントは伊藤美誠が1個多い状況ですが、平野美宇と石川佳純はこの数を追いつくまたは追い越すチャンスがあります。それは、9月に行われるアジア選手権と10月に行われる女子ワールドカップです。この2つの大会は伊藤美誠は出場しません(ワールドカップにはもともと出場できないのですが、アジア選手権は自分の意思だと思います)。


アジア選手権は二人とも第8シードまでに入る予定なので準々決勝までは中国選手と当たらず、場合によって準々決勝も中国選手と当たらない可能性があります。準々決勝で負けると900ポイントですが準決勝まで行くと1170ポイント以上になる可能性があります。ただし、石川の場合はアジアカップ3位の1170ポイントがあるため決勝まで行って1170を超えるポイントを獲得しないとポイントは増えません。

ワールドカップはステージ2(ベスト16)に進めば1020ポイントですが、準々決勝敗退でも1275ポイント、3位、4位はそれぞれ1660、1530となります。第4シードまでに入っていると準決勝まで中国選手と当たらず4位以上の可能性が高くなります。ちなみに、昨年のワールドカップでは平野美宇は準々決勝敗退、石川佳純は4位でした(こちらを参照)。

仮に上の表で平野美宇と石川佳純の⑥の枠にワールドカップ4位の1530ポイントを入れると、平野美宇は9005ポイント、石川佳純は8685ポイントとなりかなり伊藤美誠に近づきますし、3位だと平野美宇は伊藤美誠を抜き、石川佳純もかなり迫ります。それ以上の結果だと言うに及ばずです。


そこで、ワールドカップのポイントを二人とも4位のポイントにしたまま残りの大会をすべて準々決勝まで行ったと仮定して表に書き加えてみます。

伊藤美誠
平野美宇   石川佳純
 ①  2000  1500  1750
 ②  1465  1500  1465
 ③  1465  1465  1200
 ④  1440  1440  1170
 ⑤  1170  1170  1170
 ⑥(ワールドカップ4位)  1125 (1530)   (1530)
 ⑦ドイツ/オーストリアOP (1125)   (1125) (1125 )
 ⑧グランドファイナル ( 1275) ( 1275) ( 1275)
 T2ダイヤモンド(マレーシア)  400  400  400
 T2ダイヤモンド(シンガポール) (500 ) ( 500) ( 500)
 合計  11965  11905  11585

     (メモ)カッコ内は仮定のポイントです。

どうでしょうか。トップの伊藤美誠との差は平野美宇が60ポイント、石川佳純が380ポイントです。 残りの大会の成績如何で簡単に変わる差しかありません。 ここでは準々決勝敗退と仮定したのでそれよりいい結果がでればポイント合計は増えますし、悪ければ少なくなります。「東京オリンピック代表への道」のポイント積算ではわかりにくいですが、実際にはこれほど混戦だということです。


また、上記のシミュレーションにはチームワールドカップを考慮していませんが、チームワールドカップはシングルス起用での1勝が250ポイントとなるため起用方法によっては1000ポイントを越える可能性があります。


では、男子どうでしょうか。

男子は張本智和が8月のブルガリアオープンで優勝してさらにポイントを積み上げ独走状態で、2位を水谷隼と丹羽孝希が争う形になっています。4位以下の選手が離れていることに加え今後の出場できる主要大会にもすべては出場しないようなので(年内の大会スケジュールを参照)、実質的に水谷隼と丹羽孝希の2位争いと見ていいでしょう。


ではまず、女子と同じように現在の獲得ポイントを表にまとめてみましょう。

ただし、1000ポイント以上に絞ると水谷と丹羽はまだ2個しかないので、男子の場合は900ポイント以上のポイントに絞ってまとめてみます。

張本智和
水谷隼
 丹羽孝希
 ①  1800  1500  1500
 ②  1465  1125  1170
 ③  1440  900  900
 ④ 1250  900  900
 ⑤  1200  900
 ⑥  1125  900
 ⑦  1080  900
 ⑧ 900 
 T2ダイヤモンド(マレーシア)  400  400  400
 T2ダイヤモンド(シンガポール)
 合計  10660  7525  4870

9月のアジア選手権には張本智和は出場しますが水谷と丹羽は出場しません。丹羽は現状だと不利なので、9月に開催されるチャレンジプラスシリーズのパラグアイオープンにエントリーしています(こちらを参照)。チャレンジプラスシリーズは優勝ポイントが1100ポイントなので丹羽孝希はこれを狙いに行っているわけです。パラグアイオープンには、南米勢以外にヨーロッパ勢も出場しますが丹羽孝希は第1シードで第2シードは世界ランキング32位の選手なので1100ポイントを獲得できる可能性も高いです。

また、丹羽孝希は張本智和とともに11月末の男子ワールドカップに出場しますが、水谷隼は出場できません。丹羽は昨年のワールドカップにも張本とともに出場し準々決勝で敗退してます。


今後の大会で準々決勝まで進むというのは水谷と丹羽は今年の実績から少し厳しいかもしれませんが、少し希望的観測も入れて女子と同じように3人とも今後の大会はすべて準々決勝敗退と仮定して合計ポイントを計算してみます。

張本智和
水谷隼
 丹羽孝希
 ①  1800  1500  1500
 ②  1465  1125  1170
 ③  1440  900  900
 ④(パラグアイオープン:丹羽)  1250  900 (1100)
 ⑤(ワールドカップ:張本,丹羽)  (1275)  900  (1275)
 ⑥ドイツOP(水谷,丹羽)  1200  (1125)  (1125)
 ⑦オーストリアOP(水谷,丹羽)  1125  (1125)  (1125)
 ⑧グランドファイナル (1275)
 (1275)  (1275)
 T2ダイヤモンド(マレーシア)  400  400  400
 T2ダイヤモンド(シンガポール)  (500) (500)   (500)
 合計  11730  9750  10370

どうでしょうか。現在の様相と少し違いますね。実は、パラグアイオープンで丹羽孝希が優勝しワールドカップで昨年と同じ準々決勝敗退だった場合、その他のすべての大会が水谷も丹羽も2回戦敗退と仮定しても二人のポイント差の620ポイントは変わりません。丹羽は、今年のワールドツアーの成績は水谷より悪いので、パラグアイオープンとワールドカップで確実にポイントを稼いでおきたいのだと思いますし、非常に現実的な方法だとも思います。これに対して、水谷は丹羽も出場する大会で確実に丹羽を上回る必要があります。実際には、逃げる丹羽、追う水谷の構図になりそうです。こちらのレースもチームワールドカップのポイントが水を差すことがないように祈ります。