【卓球】 2019年1月世界ランキング 張本智和が3位に

 国際卓球連盟(ITTF)のホームページで2019年1月の世界ランキングが発表されました。ランキング順とランキングポイントを説明します。


2019年1月のランキングポイントは原則2018年1月から2018年12月に行われた大会が対象になります。2018年12月に行われた大会でシニアのポイントの対象になる大きな大会はワールドツアーグランドファイナルだけです。

[2019/18追記]2018年12月に行われたシニアのポイントになる大会は、グランドファイナル以外にフィンランドオープンとUSオープンがあります。これら2つの大会は大会種別では「その他」の扱いとなり優勝で300ポイントの大会です。


また、1月の世界ランキングでポイントが無効になった大会も2017年12月開催のグランドファイナルだけです。

このため、 2107年と2018年のグランドファイナルに出場していない選手はポイント変動がありませんでした。

ではまず今月のランキングを見てみましょう。
 *カッコ内は前月順位  女子  ポイント  男子 ポイント 
 1 丁寧(中国)(2)  16515(+576) 樊振東(中国)(1) 17001(-750) 
 2 朱雨玲(中国)(1) 15969(-255)  許昕(中国)(2) 15835±0)
 3 石川佳純(日本)(3) 15248(±0) 張本智和(日本)(5)  14625(+765)
 4 陳夢(中国)(4)  15194(±0) 林高遠(中国)(4)  14596(+255)
5  劉詩雯(中国)(6) 15114(+525) ティモ・ボル(ドイツ)(3) 14065(-510)
 6 王曼昱(中国)(5)  14880(±0) ウーゴ・カルデラノ(ブラジル)(6)  13955(+765)
 7 伊藤美誠(日本)(7)  13880(-255) 李尚洙(韓国)(7) 13359(+180)
 8 鄭怡静(台湾)(8)  13801(+255) 黃鎮廷(香港)(8)  12669(-255)
 9 平野美宇(日本)(9)  13065(±0) 丹羽孝希(日本)(10)  12466(±0)
 10 馮天薇(シンガポール)(10)  12580(-255)  水谷隼(日本)(13)
 12165(+960)
 11 徐孝元(韓国)(11)  12375(+280) 張禹珍(韓国) (15)
 11939(+885)
 12 佐藤瞳(日本)(14)  11628(±0)  馬龍(中国)(11)
 11930(±0)

(注)ポイントのカッコ内は前月からの増減です。

 まず注目は張本智和が昨年12月のグランドファイナル優勝で先月の自己最高5位から一気に3位に上がったことでしょう。15歳中学3年生でのトップ3はもちろん最年少記録です。張本は2017年のグランドファイナルでは準々決勝敗退で1785ポイントでしたが、今回優勝で2550ポイントを獲得したため、ポイントが入れ替わりその差765ポイントが増加しました。ここまで上がると当然いつ1位を取るかが注目されます。男女を通じた世界ランキング1位の最年少記録は18歳なので張本智和が2年半以内に世界ランキング1位になれば記録を更新できます。


グランドファイナルはポイントの大きな大会のため、2017年と2018年の両方に出場している場合、結果が異なるとランキングポイントの変動は大きいです。2017年の結果と2018年の結果で準々決勝敗退と準決勝敗退のように1ラウンド上がると255ポイント増え、逆に1ラウンド下がると255ポイント減ります。また、2017年にグランドファイナルに出場しておらず2018年のグランドファイナルに出場した選手(丁寧、劉詩雯、芝田沙季、水谷隼など)は大きくポイントを伸ばし、2017年のグランドファイナルに出場し2018年に出場していない選手 (松平健太、早田ひな、オフチャロフなど)は大きくポイントを減らして順位を落としています。


 今回のトップ10では女子は顔ぶれは変わっていませんがグランドファイナルの結果などで順位が入れ替わっています。男子は、オフチャロフがトップ10から外れ、代わりに水谷隼が10位に入っています。また、丹羽孝希はグランドファイナルの結果が2017年と2018年で同じだったためポイントは変化していませんが9位に上がっています。


 そのほかの主な日本選手の順位は、女子は芝田沙紀15位(17位)、加藤美優23位(22位)、橋本帆乃香26位(26位)、 長﨑美柚36位(37位)、安藤みなみ38位(39位) 、早田ひな43位(34位) となっています。

男子は、吉村真晴28位(28位)、 上田仁32位(32位)、 大島祐哉33位(33位)、 森薗政崇48位(48位) になっています
。また、松平健太は昨年のグランドファイナルに出場できなかったため、41位から61位に下がっています。先月のランキングでも30位から41位に落としているため2か月で世界ランキングが31落ちたことになります。


ちなみに、昨年のグランドファイナルで準優勝だった中国の何卓佳は50位から27位に上がっています。

2019年ランキングシステム(レギュレーション)の補足

 2019年の世界ランキングのレギュレーションが発表された時、筆者は2018年の大会で獲得したポイントにも同じレギュレーション(ランキングシステム)が適用されると考ました。しかし、発表された2019年1月の世界ランキングのポイント内訳を見ると2018年の大会で獲得したポイントはそのままなので、 ITTFに確認 してみたところ、2019年のランキングシステムが適用されるのは2019年以降に開催される大会ということでした。


 このために、 2019年は2018年のランキングシステムによるポイントと2019年のランキングポイントが混在することになり、 以下のメリットとデメリットが発生します。

<メリット>

  • 2018年のポイントと2019年のポイントの入れ替わりが1か月ごとなのでランキング全体が大きく変動することはない
  • 2020年1月のランキングポイントが同じように2020年世界ランキングレギュレーションの影響を受けないと考えられるので、東京オリンピックを目指す日本選手にとっては12月の大会が終わった段階で順位が確定する(新ランキングシステムの適用による順位の大幅な変動を心配する必要はない)
<デメリット>
  • 同じ月に同じ大会が開催される場合も、 2018年の大会の結果が優勝以外の場合は、 同じ結果でも獲得ポイントが大きく下がる

今月のトピック

 東京オリンピックのシングルスの出場選手2名は2020年1月の世界ランキングでの日本選手の上位2名がJOC(日本オリンピック委員会)に推薦されることになっています。


 そこで、世界ランキングで日本選手で2番目になるには、どのぐらいのポイントが必要か考察してみたいと思います(結果についても考えてみようかと思いましたがポイント配分が2018年と2019年で大きく変わっているため参考にならないと考えました)。


といっても、ランキングは他の選手との相対的なものなので一概には言えません。そこで、2019年1月の世界ランキングで日本選手1位が男女共3位になっていることから世界ランキング4、5、6位の平均を目安に考えてみたいと思います。


2019年1月の世界ランキングの4、5、6位は上の表のように女子は、陳夢、劉詩雯、王曼昱、男子は林高遠、ティモ・ボル、ウーゴ・カルデラノです。本来は、新ランキングシステムで再計算した順位を使用したほうがいいとは思いますが2018年11月の女子の世界ランキングでシミュレーションした結果、順位にほとんど影響がなかったので現在の世界ランキングの4、5、6位の選手で考えました。


まず、6選手の2019年1月世界ランキングに算入されている8大会とその結果、および新ランキングシステムでのポイントを表にまとめます。

 陳夢 劉詩雯 王曼昱
 2017世界卓球個人戦 QF (1500)
 2017世界卓球個人戦 SF(1950)
 WTハンガリーOP 優勝 (1800)
 WTPカタールOP SF (1465)
 WTPカタールOP (優勝) (2250)
WTPカタールOP 準優勝 (1800)
 2018アジアカップ 準優勝 (1350)
 2018世界卓球団体戦 6勝 (1500)
 WT香港OP 優勝 (1800)
 WTP韓国OP 準優勝 (1800)
WTジャパンOP SF (1170)
 WTP中国OP 優勝 (2250)
 2018アジア競技大会 準優勝 (1140)
 WTP韓国OP SF (1465)
 WTジャパンOP 準優勝 (1440)
 WTスウェーデンOP SF (1170)
 WTPオーストラリアOP 優勝 (2250)
 WTP韓国OP QF (1125)
 WTPオーストリアOP 優勝 (2250)
 WTPオーストリアOP QF (1125)
 WTPオーストリアOP 準優勝 (1800)
 グランドファイナル 優勝 (2550)
 グランドファイナル QF (1275)
 グランドファイナル QF (1275)
 13225ポイント 12985ポイント   13290ポイント
 林高遠 ティモ・ボル   ウーゴ・カルデラノ
 2017世界卓球個人戦 R16 (1200)
 2017世界卓球個人戦 QF (1500)
 2017世界卓球個人戦 R32 (900)
 WTPカタールOP SF (1465)
 2018欧州トップ16 準優勝 (1350)
 WTハンガリーOP SF (900)
 2018アジアカップ 準優勝 (1350)
 WTPドイツOP QF (1125)
 WTPカタールOP 準優勝 (1800)
 WTP中国OP SF (1465)
 2028世界卓球団体戦 7勝 (1750)
 2018世界卓球団体戦 8勝 (2000)
 WTP韓国OP SF (1465)
 WTジャパンOP SF (1170)
 2018パンナムカップ 優勝 (1800)
 2018アジア競技大会 準優勝 (1310)
 2018ワールドカップ 準優勝 (1915)
 WTP韓国OP QF (1125)
 2018ワールドカップ 3位 (1660)
 WTPオーストリアOP QF (1125)
 WTPオーストリアOP QF (1125)
 グランドファイナル 準優勝 (2040)
 グランドファイナル R16 (1020)
 グランドファイナル SF (1660)
 11955ポイント  10955ポイント  11310ポイント

(メモ)WTP=ワールドツアープラチナ、WT=ワールドツアー、OP=オープン、SF=準決勝敗退、QF=準々決勝敗退、R16=ベスト16敗退、R32=ベスト32敗退、カッコ内は2019年ランキングシステムでのポイント

以上の表から、女子の4~6位の平均のポイントは約13166ポイント、男子の4~6位の平均は約11407ポイントになります。

これをランキングポイントに算入される大会数の「8」で割ると女子は約1646ポイント、男子は1426ポイントになります。


また、この表からは2019年のランキングシステムのポイント配分の特徴がよくわかります。つまり、1つは女子と男子の平均ポイントの差が広がっていること、そして王曼昱のポイントが陳夢と劉詩雯より高くなっていることです。2018年のランキングシステムが適用されている上記の今月のランキングポイントでは女子のこの3選手の平均は約15063ポイント、男子の3選手の平均は約14205ポイントで差は858ポイントですが、2019年のランキングシステムで計算したものでは1759ポイントに広がっています。これは、男子のこの3選手より女子の3選手の方が優勝や準優勝が多いからで、いい結果で終わった場合により重きを置いた2019年ランキングシステムの特徴が表れています。また、 王曼昱のポイントが 高くなったのも優勝と準優勝が多く、特に優勝の比率が高いからです。

 まず、女子について考えると平均1646ポイントを獲得するには、ワールドツアープラチナで優勝して2250ポイントを獲得した場合、別の大会で1042ポイント以上を獲得すれば2大会の平均で1646ポイントを越えます。男子の場合も同じように考えると、ワールドツアープラチナ優勝で2250ポイントを獲得した場合、別の大会で602ポイントを獲得すれば2大会の平均が1426ポイン60トを越えます。

この考え方でワールドツアープラチナとワールドツアーで獲得したポイントに対して、先ほど計算した平均を超えるために必要なポイントを表にしてみます。

 結果  プラチナの
ポイント
 女子
要ポイント
 男子
要ポイント
 Wツアーの
ポイント
 女子
要ポイント
 男子
要ポイント
 優勝  2250  1042  602  1800  1492  1492
 準優勝  1800  1492  1052  1440  1852  1412
 準決勝敗退  1465  1827  1387  1170  2122  1682
QF敗退  1125  2167  1727  900  2392  1952
 2回戦敗退  900  2392  1952  720  2572  2132
 1回戦敗退  645  2647  2207  540  2752  2312

この表から見ると、女子の場合はワールドツアープラチナ優勝の場合に平均を超えるには1042ポイント以上が必要なので、別のWTプラチナで準々決勝以上か通常のワールドツアーで準決勝以上に進めばいいことがわかります。ワールドツアープラチナの準優勝なら、1492ポイント以上ですからわずかに足りませんがWTプラチナの準決勝以上かワールドツアーで準優勝以上が必要になるということです。世界選手権やグランドファイナルなどでもっと高いポイントを獲得すれば、平均を確保するために必要なポイントも下がりますがどちらにしろかなり厳しい条件です。


男子は、WTプラチナ優勝の場合は602ポイント以上あれば平均を上回るので、WTプラチナの1回戦以上、または通常のワールドツアーの2回戦以上が必要ということになります。WTプラチナで準優勝だと1052ポイントが必要なのでプラチナの準々決勝以上、通常のワールドツアーの準決勝以上に進む必要があります。


また、ポイントの高い大会に出場すればそれだけ高いポイントを獲得できる可能性も上がりますので、以下の主要選手は以下の大会への出場は必須で、そこでいい成績を残すことが必要になってきます。


  1. 世界選手権
  2. ワールドカップ
  3. グランドファイナル

 最後に、上記の考察を基に女子と男子の2019年の成績のモデルケースを作ってみたいと思います。


[2019/4/27追記:T2ダイヤモンド大会は世界ランキングに算入する8大会とは別にランキングポイントに加算できることになり、ポイントも最大1000ポイントになりました(詳細はこちらを参照)。そのため、以下の予測を修正しました。]

  以下が上記で計算した現在の世界ランキング4~6位の平均ポイント(女子13166ポイント、男子11407ポイント)前後のポイント獲得の例です。

 女子  男子
 世界選手権個人戦 準決勝敗退 (1950)
 世界選手権個人戦 準決勝敗退 (1950)
ワールドカップ 3位 (1660)
 ワールドカップ 3位 (1660)
 ワールドツアープラチナ 準優勝 (1800)
 ワールドツアープラチナ 準決勝敗退 (1465)
 ワールドツアープラチナ 準決勝敗退 (1465)
 ワールドツアープラチナ 準々決勝敗退 (1125)
 ワールドツアー 優勝 (1800)
 ワールドツアー 優勝 (1800)
 ワールドツアー 準優勝 (1440)
 ワールドツアー 準々決勝敗退 (900)
チームワールドカップ 5勝 (1250)
 チームワールドカップ 5勝 (1250)
 グランドファイナル 準決勝敗退 (1660)
 グランドファイナル 準決勝敗退 (1660)
 13025 ポイント  11810 ポイント

(メモ)2019年の各大会で獲得できるポイントの表はこちらを参照してください。また、8大会のポイント以外にランキングポイントに加算されるT2ダイヤモンド大会のポイントは含んでいません。

ここでは、昨年4月に行われた世界選手権団体戦は含めていません。これは、すでに終了している大会でありポイントを獲得した選手も限られているからです。さらに、水谷隼が6勝(1500ポイント)、張本智和が5勝(1250)、丹羽孝希が3勝(750)なので、ポイントが算入されそうなのは水谷だけです。女子もモデルケースには世界選手権団体戦は含めてませんが、場合によってポイントが算入されそうなのは伊藤美誠(8勝、2000ポイント)、石川佳純(7勝、1750)、平野美宇(6勝、1500)の3選手だけです。


また、ポイント構成モデルには、通常のワールドツアープラチナの準々決勝敗退(1125ポイント)、ワールドツアーの準決勝敗退(1170)や準々決勝敗退(900)が含まれていますが、チャレンジプラス優勝でも1100ポイントを獲得できますが、ワールドツアープラチナと通常のワールドツアーが6試合ずつとT2ダイアモンドが3試合あるので、これらの大会で必要なポイントを確保してほしいです。


実際には、どのような展開になるのかわかりませんし、選手は2位を目指すのではなく出来る最高の結果でトップを目指していると思いますので、ひとつの見方としての考察と捉えて頂ければ幸いです。各選手が実力を発揮して怪我無く1年を戦ってくれることを祈っています。