【卓球】 2019年8月世界ランキング

 国際卓球連盟(ITTF)のホームページで2019年8月の世界ランキングが発表されました。ランキング順とランキングポイントをまとめます。


2019年8月のランキングポイントは原則2018年8月から2019年7月に行われた大会が対象になります。つまり、2019年7月に獲得したポイントが7月のランキングポイントに加えて新たにランキングポイントの対象になり、2018年7月に獲得したポイントは対象でなくなります。


2019年7月に行われた大会では以下の大会がシニアのポイントの対象になります。


  • 2019韓国オープン(ワールドツアー)
  • 2019オーストラリアオープン(ワールドツアープラチナ)
  • T2ダイヤモンド マレーシア
  • 平壌オープン(チャレンジプラス)
  • コモンウェルス卓球選手権(旧英連邦諸国)
また、8月の世界ランキングでポイントが無効になった大会は以下の3大会です。
  • 2018韓国オープン(ワールドツアー)
  • 2018オーストラリアオープン(ワールドツアープラチナ)
  • 2018南米カリブ海諸国競技大会(マルチスポーツゲームス)
ではまず今月のランキングを見てみましょう。
 *カッコ内は前月順位  女子  ポイント  男子 ポイント 
 1 陳夢(中国)(1)  16605(+275) 許昕(中国)(1) 15980(+1035) 
 2 丁寧(中国)(3) 15380(+475)  樊振東(中国)(3) 15470(+800)
 3 朱雨玲(中国)(4) 14710(±0) 馬龍(中国)(5) 14955(+1830)
 4 王曼昱(中国)(5) 14440(+395) 林高遠(中国)(2)  14900(+65)
5  劉詩雯(中国)(2) 13890(-1620) 張本智和(日本)(4) 13345(-150)
 6 石川佳純(日本)(6)  13133(-475) カルデラノ(ブラジル)(7) 12540 (-50)
 7 孫穎莎(中国)(11) 12915 (+1895) ファルク(スウェーデン)(9) 12340(+745)
 8 伊藤美誠(日本)(7) 12710 (-25) ティモ・ボル(ドイツ)(8)  12325(±0)
 9 鄭怡静(台湾)(8) 12190(-275)  梁靖崑(中国)(6) 12190(-614)
 10 平野美宇(日本)(9) 12050(+85) 丹羽孝希(日本)(13)
11200(+400)
 11 杜凱栞(香港)(12) 11010(+400) オフチャロフ(ドイツ) (11)
10763(-50)
 12 馮天薇(シンガポール)(13)  10525(+60) ピッチフォード(イングランド)(15)
10490 (±0)
 13 徐孝元(韓国)(10) 9995 (-1125) 林昀儒(台湾)(16) 10245 (+436)

 女子は先月11位だった中国の 孫穎莎 (スンインシャ)が7位に飛び込んできました。孫穎莎は6月のジャパンオープンに優勝して先月は2110ポイントを伸ばし18位から一気に11位まで上昇しました。7月はさらに韓国オープンで準決勝進出、ワールドツアープラチナのオーストラリアオープンで優勝と好成績で一気に1895ポイントを伸ばしました。中国国内の世界選手権選考を兼ねた 今年2月の 「地表最強12人」で準優勝して以来、好調を維持して、とうとう中国トップ5に肩を並べました。
なお、孫穎莎のトップ10入りは初めてではなく、シニアデビュー戦のジャパンオープンでいきなり優勝した2017年にトップ10入りし、2017年12月の世界ランキングでは7位にいたのですが2018年1月からのランキングシステムの改訂により順位が落ちていました。

 男子は15か月維持していた1位を先月許昕に譲って3位に落ちた中国の樊振東(ファンジェンドン)が2位に上がり、馬龍も5位から3位に上がっていよいよランキングトップに実力者の顔が揃った感じです。先月惜しくも1位を逃して2位に甘んじた林高遠はランキングポイントは減らさなかったのですが、上位3選手が大幅にポイントを伸ばしたため順位が落ちてしまいました。


また丹羽孝希は、昨年7月の韓国オープンとオーストラリアオープンの結果が振るわずポイント失効の影響がなかった(有効ポイント一覧を参照)ので、単純にT2ダイヤモンドの400ポイントが7月のランキングポイントに上乗せされてトップ10に返り咲きました。


 そのほかの主な日本選手の順位は、女子は、佐藤瞳17位(16位)、芝田沙季20位(15位)、加藤美優26位(22位)、橋本帆乃香32位(23位)、早田ひな34位(39位)、長﨑美柚44位(41位)、木原美悠52位(66位)となっています。

男子は、水谷隼14位(13位)、吉村和弘43位(50位)、吉村真晴48位(40位)、大島祐哉49位(22位)、上田仁50位(34位)、森薗政崇56位(33位)、松平健太59位(55位)となっています。


6月と7月はアジアでの試合が多くヨーロッパ選手のランキングポイントの変動が少ないため、相対的にランキングが落ちてしまった日本選手が多かったようです。そんな中で、早田ひな、木原美悠、吉村和弘がランキングを上げています。8月からは試合の舞台がヨーロッパに移り、ヨーロッパ選手のランキングポイントも動き始めるので日本選手は頑張ってランキングを上げてほしいですね。

トピック:五輪代表レースの現状分析と後半戦の考察

 1年を前半と後半に分けると7月からが後半ですが、日本選手に関わる卓球の国際大会では、8月からが後半と言えます。

ワールドツアーとワールドツアープラチナは年間で12大会ありますが、日本選手は1月のハンガリーオープンに出場していないので実質11大会でワールドツアーの締めくくりのグランドファイナルを含めて12大会です。7月までにこのうちの6大会が終了し残り6大会が8月以降に行われます。また、世界選手権やワールドカップなど日本選手が出場できる大きな大会も年間5大会中3大会、T2ダイヤモンド大会も年間3大会中2大会が8月以降に開催されます。


2020年1月の世界ランキングで来年の東京オリンピックのシングルスの代表が決まるため、2020年1月の世界ランキングで対象となる大会のポイントを男女各10選手について積算しています(こちらのページ)が、ここでは男女トップ3選手の現在の状況と後半戦での考察を行ってみたいと思います。


まず、男女トップ3選手のポイントの現状をまとめてみます。

伊藤美誠   平野美宇  石川佳純 張本智和   水谷隼 丹羽孝希 
 7月までの
積算結果
 10370  9590  9405  9535  7840  7690
 ①  2000  1500  1750  1465  1500  1500
 ②  1465 1500   1465  1440  1125  1170
③   1465  1465  1200  1250  900  900
 ④  1440  1170  1170  1200  900  900
 ⑤  1125  900  900  1125  900  750
⑥   900  900  900 1080  900  720
 ⑦  900  900  900  900  675  675
⑧   675 855  720  675  540  675
第1回T2ダイヤモンド   400  400  400  400  400  400

①~⑧はランキングポイントに算入する8大会をポイントの高い順に並べています。各ポイントがどの大会のポイントなのかはこちらの積算勝(女子男子)で確認してください(赤字のポイントはアジアカップのポイントです) 。なぜ8大会なのかわからない方は「2019世界ランキングシステムの説明」をご覧ください。


東京オリンピック代表への道」のページの初めに前半は1000ポイント以上を何個獲得するかというラフな見方でいいと書きましたが、実際に1000ポイント以上のポイントの個数でリードしている伊藤美誠と張本智和がリードし、個数が同じ平野美宇と石川佳純、水谷隼と丹羽孝希がそれぞれ僅差という状況になっています。


後半戦でのポイントは以下の点です。


  • 1000ポイント未満をなくすこと
  • 1000ポイント以上のポイントの質を上げること
  • ポイントの高い大会で確実にポイントを獲得する
  • T2ダイヤモンド大会でのポイント獲得

1つずつ説明していきましょう。

1000ポイント未満をなくすこと

表に「900」というポイントが多いのに気が付くと思いますが、「900」ポイントはワールドツアープラチナでは2回戦敗退、通常のワールドツアーでは準々決勝敗退でのポイントです。つまり、1000ポイント以上を増やすにはワールドツアープラチナでは準々決勝以上、ワールドツアーでは準決勝以上に進む必要があるということです。


<1000ポイント以上のポイントの質を上げること>

例えば、女子のトップ3選手の①~④のポイントを足した合計と平均を比較すると次のようになります。

 伊藤美誠  平野美宇  石川佳純
 ①+②+③+④ 6370  5635   5585
平均   1592 1409  1396

つまり、1000ポイント以上を揃えるだけでなく、当然なるべく高いポイントが必要になります。

今年1月の世界ランキングのまとめのトピックで東京オリンピック代表の合格ラインを4位~6位の平均で予測し、8大会の合計が女子が13166ポイント(1大会平均1645.8)、男子が11407ポイント(1425.8)とし以下のモデルケースを作りました。少し厳しいかもしれませんが、ここを目指して頑張ってほしいです。

 女子  男子
 世界選手権個人戦 準決勝敗退 (1950)
 世界選手権個人戦 準決勝敗退 (1950)
ワールドカップ 3位 (1660)
 ワールドカップ 3位 (1660)
 ワールドツアープラチナ 準優勝 (1800)
 ワールドツアープラチナ 準決勝敗退 (1465)
 ワールドツアープラチナ 準決勝敗退 (1465)
 ワールドツアープラチナ 準々決勝敗退 (1125)
 ワールドツアー 優勝 (1800)
 ワールドツアー 優勝 (1800)
 ワールドツアー 準優勝 (1440)
 ワールドツアー 準々決勝敗退 (900)
チームワールドカップ 5勝 (1250)
 チームワールドカップ 5勝 (1250)
 グランドファイナル 準決勝敗退 (1660)
 グランドファイナル 準決勝敗退 (1660)
 13025 ポイント  11810 ポイント

ポイントの高い大会で確実にポイントを獲得する

同じ準々決勝敗退でもワールドツアーよりワールドツアープラチナの方がポイントが高いので、高いポイントを獲得するにはポイントの高い大会で確実にポイントを獲得することが今後重要になります。


8月以降に行われる大会をポイントの高い順に並べてみます。

 最終結果  優勝 準優勝   準決勝  準々決勝  ベスト16  ベスト32
 ワールドカップ  2550  1915  3位1660
4位1530
1275  1020  7~20位
765
 グランドファイナル 2550  2040 1660 1275 1020
 ワールドツアープラチナ  2250 1800  1465 1125  900  675
 ワールドツアー  1800 1440 1170  900  720  540
 アジア選手権  1800 1350  1170  900  720  540
 チームワールドカップ  1勝: 250

1000ポイント以上のポイントを赤字にしました。

ワールドカップはグループリーグのステージ1を通過すればベスト16ですが、出場は各国2名までで平野美宇、石川佳純、張本智和、丹羽孝希の出場が決まっています。ベスト16には4選手とも確実に進むと思われますが、ステージ2のトーナメントの組み合わせはその時の最新の世界ランキングを基に決まるので10月の世界ランキングが大事です。中国選手2名は確実に4位までに入ると思われるのでシード順が4位までだと準決勝まで中国選手と当たりません。


グランドファイナルは出場すればベスト16です。ただし、ワールドツアーポイントのランキング(ワールドツアースタンディング)で出場選手が決まりますので中国選手が多数出場することが予想されます。


アジア選手権はアジア各国から4~5名の選手が出場すると思われますが、優勝ポイントが通常のワールドツアーと同じため準決勝以上に進まないと1000ポイント以上になりません。また、アジアカップとアジア選手権のポイントは両方のポイントをランキングポイントに算入できずどちらか一方になるため、上の現在のポイントの内訳で赤で示したように石川佳純と丹羽孝希は準決勝敗退と同じポイントをアジアカップで獲得しているので優勝か準優勝でないとアジア選手権でのポイントの増加はありません。


チームワールドカップは団体戦でのシングルスの1勝が250ポイントで、5勝すると1250ポイントになります。昨年2月のチームワールドカップでは石川佳純が5勝に対して伊藤美誠は1勝でした。チームワールドカップでの個人のポイントは誰を2点にするかなど起用方法で大きく違ってきますので監督の裁量にかかってきます。この辺りは別のトピックで触れたいと思います。


T2ダイヤモンド大会でのポイント獲得

最後にやはり無視できないのは、8大会のポイント以外で上乗せされるT2ダイヤモンド大会のポイントでしょう。出場すれば400ポイント、1つ勝つごとに100ポイント増え、優勝では1000ポイントになります。ライバルに200ポイントの差をつければ900ポイントが1100ポイントになったのと同じことになります。

第1回のマレーシア大会では加藤美優がまさにそれをやってのけました。加藤美優のカタールオープンの900ポイントは1100ポイントの値打ちが出てきました。8月以降にまだ2大会あるT2ダイヤモンドは、ライバルに差をつけて、上で述べた「1000ポイント以上のポイントの質を上げる」チャンスなのです。


さあ、応援している選手が後半戦をどう戦えばいいのかを考えながら声援を送りましょう。